うつ病などの精神疾患や、発達障害、ADHDなどになってしまう人の多い現代。
そんな人たちがキチンと社会復帰ができるようにサポートしてくれる " 就労移行支援事業 " というところがあるらしく、
「就労移行支援ってなに?」
と純粋にそんな疑問をもったので、就労移行支援事業所「ルーツ」さんに取材に行ってきました!
就労移行支援とは?
障害者総合支援法(旧 障害者自立支援法)に定められた就労支援事業の一つ。一般企業に就職を目指す障碍をお持ちの方に対し、就労に必要な知識・能力の向上を目的とした訓練や準備、就職活動支援及び就職後の職場定着支援を行います。
まず疑問に思ったのが「就労移行支援ってなんやねん」ということ。
引用文にはむずかしい言葉が並んでいますが、カンタンにいうと「障害や精神疾患をもった方々の就職活動を支援しまっせ!」というもの。そしてなんとなんと就職活動だけではなく、職業訓練や就職後のアフターケアもしてくれます。
利用対象と利用期間
この就労移行支援サービスの利用対象となる人は、以下の3つに当てはまる方です。
- 身体・知的・精神障害や難病のある方
- 就労または開業を希望する方のなかで、就労可能と見込まれる方
- 18歳以上から65歳未満の方
このような方はサービスを受けることができます。
期間は原則2年までとなっています。この2年の期間で就労活動(職業訓練や就職先探し)などのサポートを受けて就職を目指していきます。
利用者さんの9割は、本人負担ゼロ!
前年度の所得が約300万円以下ではあれば、利用料金は0円です。なんと、タダなんです。これには僕もびっくり。利用者さんのうち9割の方の本人負担は0円になっているとのこと。
職業訓練〜就職〜アフターサポートまでが無料ってすごいですよね。なんでも、国が資金面で協力してくれているので利用者さんの負担がめちゃくちゃ軽いんだとか。
前年度の所得が約300〜600万円の方でも月額9000円程度でサービスを受けることができます。
就労移行支援事業所「ルーツ」の3つの特徴
いまではこの就労移行支援事業所というものは全国に2952ヶ所もあります。たくさんありますねえ。そのなかで今回紹介する「ルーツ」さんにはどんな特徴があるのでしょうか?
実際にルーツで働くスタッフさんから聞いた3つの特徴を書いていきます。
1. Webスキルが身につけられる!
ルーツの一番の強みはココですね。Web系のスキルを教えることに特化していて、通いながらしっかりとWebスキルを身につけることができます。
数ある就労移行支援事業所のなかでも、ここまでWebに力を入れているところは少ないでしょう。プログラミングやウェブデザインなど、企業の即戦力となれるようなスキルを学んぶことができます。
しかもルーツさんはオフィスが超綺麗。ここに通って教わることができます(羨ましい!)
インターネットが普及した現代において、プログラミングやデザインなどのWeb系のスキルは重宝されますし、ぼくもメディア運営で生計を立てている身ですが、正直これらのWebスキルさえ身に付けてしまえば食っていけます。
通常これらのウェブスキルを学ぶには高額なお金がかかります。プログラミングスクールなんかだと15〜30万円は普通にかかってきます。それを就移行支援事業所を通して受けることで本人負担がほぼゼロになってしまうのです。
2. 就職前に実習でしっかりと経験を積める!
いきなり就職して働くのは不安ですし、怖さもありますよね。イメージしていた仕事の様子と、実際の現場での様子は異なったりします。
ルーツではこのような不安を払拭するために、実習という形で実際にその仕事に触れたり、実務をこなすことができるので、就職するまでにしっかりと力をつけることができるんですね。
技術が学べて、経験も積めて、その上で就職活動ができるという至れりつくせり状態。すごい。
3. 通所相談から就職後までフルサポート!
ルーツでは通所相談から就職後のサポートまですべてやってくれます。就職活動と就職後の活動にはどうしても不安が伴います。そこを二人三脚でしっかりフルサポートしてくれるのがルーツの良いところ。
就職してから仕事をしていくなかで悩みや疑問点は確実に出てきますからね。それを自分ひとりで抱え込まずに気軽に相談できる環境があるのは利用者さんにとって大きいのだと思います。
その人のペースに合わせて最初から最後まで安心して進めることができ、満足度も非常に高いよう。スタッフさんも優しくて良い人ばかりなんです。
就職までの流れ
実際にルーツを利用したときの「就職までの流れ」を書いていきます。
① 面談
まずはルーツのスタッフと面談をおこないます。その人の性格や特徴、得意なことや不得意なことをヒヤリングしながら「その人に合った職業」や「向いている分野」を一緒に考えていきます。悩みや不安に感じていることなどもここで全部話していきましょう。
② 実習
つぎに先ほど紹介したWeb系の学習(デザインやプログラミング)やビジネスマナー、コミュニケーション、就活講座などの実践的な訓練をおこなっていきます。
こう書くと難しくてカタい感じがしますが、実際はもっとやさしくフランクな内容になっていて、ゆっくりとその人のペースを見ながら教えてくれます。
③ 就活
3つ目のステップとして、就職活動があります。
まずは面談や実習で得た、自分の強みや適性・資格・能力・経験をふまえて就職活動のための計画を立てていきます。希望条件(勤務地・勤務時間・給料など)もルーツスタッフとしっかり決めてから就職活動へと臨んでいきます。
④ 継続支援
「初めての職場でうまくやっていけるか不安、、」 「ここがどうしても上手くいかないんです、、」実際に就職してみるとそんな悩みや不安も出てくると思います。そこの部分のアフターサポートもルーツは充実しています。
卒業後(就職後)もしっかり面倒をみてくれる安心感は、その後その職場で長く働いていく上で必要不可欠なモノになってくるようです。
実際にお話を聞いてきました!
そんなわけで、実際にルーツのオフィスにお邪魔させていただくことができました。いくつか僕が客観的に見ていて気になった点を根掘り葉掘り聞くことに成功。にやり。
代表の想い
古徳 一暁(ことく かずあき)
1990年9月15日、茨城県出身。
父は中古車販売、祖母は酒屋、祖父は税理士事務所、叔父は飲食業を営む経営者一家で育つ。
高校卒業後、偏差値を30近く上げる猛勉強の末、上智大学文学部に合格。
大学在学中に個人で学習塾を立ち上げ、東大合格者も排出する。
事業は順調であったが、自身の大学生活に疑問を持ち、自ら新事業をするため2年で大学を中退。圧倒的に記録を残し、記憶に残る会社を創るという思いを胸に、2015年6月、株式会社LOGZを創業。
現在、LOGZはウェブ制作事業、障がい者雇用コンサルティング事業、就労移行支援事業などを行う。
さまざまな事業を手掛け、成果を上げてきたルーツの古徳代表。
そんな彼が今なぜ「就労移行支援事業」に目を向けたのか? 業界の現状をどう感じているのか?
いくつか気になった点があったので質問させていただきました。
ー 就労移行支援事業所「ルーツ」を立ち上げようと思ったキッカケはなんですか?
私が学生時代の頃、実の弟が自殺未遂を繰り返してしまうような統合失調症にかかってしまいました。
当時の私には、そういった障がい者や病気に対しての知識が一切なく、実際に向き合う経験もなかったため、ただ動揺するばかりで、何もすることが出来ず、自分の無力さを痛感しました。
その後、弟は通院により、症状が出ることは少なくなりましたが、現在も自立した社会復帰は出来ておりません。
当時の無力な自分が悔しく、今後は弟が自立していく手助けをしていきたいと強く思うようになり、障がい者の社会復帰に関心を向けました。
障がい者雇用について調べはじめ、「なにか障がい者の雇用を改善できるものは無いだろうか。」と考え続けていました。
そんな中、弊社で行っているプログラミングの教育事業は、うつ病や統合失調症などの精神病、発達障がいなどの方たちの「就労のサポートをしていくスキル」として非常に有効だと感じました。
そこで、今なら弟のような人たちに自分でも出来ることがあるのではないかと考え、就労移行支援事業に乗り出しました。
ー 障害者雇用の現状についてはどうお考えですか?
従業員数100名以上の企業は、全従業員に対して2%の障がい者を雇用しなければいけません。
しかし、56%の企業が雇用義務を果たせていないのが現状です。そういった企業に電話して聞いたところ、一般就労と同等のパフォーマンスで働ける人が足りないという返答がきました。
人にはそれぞれの長所と短所があります。
それは障がいの有無の別なくです。それが「障がい」となってしまった途端に、一般企業への就労が難しくなっている現状。
人は誰でも短所を補うために、長所を伸ばしていきます。だからこそ、障がいを持つ人も、同等なパフォーマンスが発揮出来れば、雇用の需要は生まれるということです。
そのサポートが今必要とされていると思います。
ー ルーツの目指す就労移行支援のカタチを教えてください
精神障がいや発達障がいを抱えた人たちは、コミュニケーションや、対人対応での弱さはあるかもしれませんが、細かな作業では、無類の集中力を発揮したり、一般人にはない才能を持っています。
そのため、プログラミングの習得も早いのではないかと思っております。そしてそれが、プログラミングの教育事業、ウェブ制作を受けている弊社だからこそ出来ることだと思っております。
そして「障害者の働きやすい企業は、健常者も働きやすい」ということを、この事業を通じてとても感じています。
ルーツは精神障がいの方たちの就労支援というだけでなく、障がい者雇用問題を少しでも解決に向かわせることが出来るよう、やれることからこなしていく、そんな就労移行支援事業所にしていきたいと思います。
ルーツを利用した人の声
実際にルーツを利用した人の声を集めてみました。
Aさん:「私は、元々はネットワークエンジニアの仕事をしていたのですが、統合失調症になってしまい、辞めてしまいました。それから闘病生活を経て今に至り、再び就職したいと思うようになり、今後どのような仕事をしていこうかと考えた時、以前培った技術を活かしたいという思いがありました。
しかし、すぐに再就職というのはさすがに不安で、役所などに相談に行ったんです。その時に偶然ルーツのリーフレットが目に入って、なんとなく開きました。そうしたら、プログラミングやWebデザインが学べると書いてあって。
Word、Excelなんかの事務的なことを学べる事業所は多くても、プログラミングやWebデザインなんかを学べるところは少なくて、そんな中でルーツのリーフレットを見て、ここにしようと思いました。」
Mさん:「私はもともとは就労継続支援B型の作業所に通所していました。でも、そこで行うのは単純作業ばかりで、やりがいが見出せずに、休んだり、遅刻したり…といったことを繰り返していたんです。そんな時に、その作業所の就労担当者の方からルーツのリーフレットを見せてもらったのですが、Webデザインの勉強が出来ると書かれてあるのを見て、すごく興味を惹かれました。
Webデザインに挑戦したいと思ってルーツに入ったのはいいのですが、そのために使うIllustratorなどのソフトは全くの初心者で、不安もありました。実際に使ってると、テキストを読んだり、スタッフに教えてもらったりしても何度も行き詰まることがあり、苦労の連続でした。
それでも、少しずつIllustratorが使えるようになってくるのが楽しくて、つまづいても「明日はこれをできるようになろう」って気合いを入れたりして…そうしていると、自然と毎日通うようになっていました。」
Aさん:「私は、ルーツに通いながら、就職活動にも積極的に取り組みました。たくさんの⾯接を経験することで、就職活動に慣れたいと思ったんです。また、これは私なりのやり方で、これを真似してほしいわけではありませんが、今回の就職活動ではあえて障害をオープンにして一般枠で応募し、それでも尚面接してくれる企業を探すという試みもしました。
最終的には7社の面接を受けることができたのですが、結局統合失調症の等級を理由に落とされた企業もあり、とても苦労しました。
落とされたらその時はその時と割り切って、気持ちを切り替えて次に臨むように心がけて、面接前にはしっかりと準備をするように頑張りました。結果として内定をもらうことができ、正直ホッとしています。仕事をすることが今から楽しみです」
Q&A
Q. 障害者手帳を持っていないのですが利用できますか?
障害者手帳をお持ちでない方でも、障害福祉サービス受給資格者の支給決定を受けることができれば可能です。詳しくはお住まいの市区町村の窓口、またはこちらからお問い合わせください。
Q. 利用料金はかかりますか?
ほとんどの場合は免除されますが(負担なしで受けられますが)、前年度の収入等により自己負担が発生する場合があります。詳しくは、お気軽にお問い合わせください。
Q. 通う頻度はどのくらいがいいですか?
体調や、通院状況などを十分に考慮しながら、相談してペースを決めていきます。
まとめ
自分自身の実体験からくる代表の想い、時代の流れを考慮したWeb面の強化。ルーツのどの側面を見ても共通しているのは「利用者さんのため」というひとつの意志に集約されているのだろうな、ということを今回実際にお話を聞きながら感じました。
いま悩んでいたり、不安を抱えている方々にすこしでもルーツの存在が届きますように。
就労移行支援事業所「ルーツ」の皆さん、
今回はお忙しい中取材させていただきありがとうございました!