はなうた横丁

 ふらっとゆる〜く息抜きに。

僕はお金が嫌いだった。


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お金なんてなければいいのに

あの日のぼくは本気でそう思っていた。

ごはんを食べるのにも、移動をするのにも、どこかに住むのにも、ヒトとして生活を送るうえで「お金」というものはどうしても必要になってくる。

しかしお金というものの無機質さを僕はどうしても受け入れることができなかった。人と人とのあいだにお金が介在することに猛烈な違和感を覚えた。

ぼくは、お金が嫌いだった。

 

お金には体温がない

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「人のあたたかさ」や「ぬくもり」とやらが大好きだった僕は、優秀な飼育員によりぬくぬくと養殖され、見事オトナってやつになった。

学生までは友人と馬鹿やって、スポーツに恋愛に青春していたゴーマイウェイな僕も、社会に出れば自分の生活のためにお金を稼ぎ、会社の利益のために働いていた。

なんだこの虚無感は

社会人一年目、まず初めに感じたのはお金の無機質さだった。自分が誰かのためを想ってしたことが、お金をもらってしまうことで、そのためだけにしたように思えてしまう。

ほんとうはその人のために温かい感情を注ぎ込んでいるのに、お金のせいで、その感情が薄まってしまう。価値が下落してしまう。お金をもらうことで、僕がそこに乗せている想いが死んでいた。


そんなこんなで整体師だった僕はプライベートではお金をもらわずに施術をしたりしていた。想いがちゃんと伝わる気がしたからだ。そのほうが気持ちがよかった。

それからというもの、生きていくうえで常にお金がつきまとうことに気持ち悪さを感じていた。人と人とあいだに利害があることが嫌だった。できることならばお金の存在しない世界で暮らしたい。そんなことを思っていた。

お金には体温がない。だから嫌いだった。

 

お金が必要になった

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僕にはやりたいことがあった。やりたいことをやるために、お金がどうしても必要になった。

そこで僕は初めて「お金をください」と人に言った。あれだけ嫌いだったお金を自分から「ください」と言った。

クラウドファンディングというシステムを通して、やりたいことをやるためにお金が必要だということを説明した。どうしてもやりたいからお金をくださいと叫んだ。

いろんな人に会いにいって、直接想いを伝えた。とにかく毎日走りまわった。

それほどにやりたいことだった。

 

たくさんの支援をいただいた

 

結果的に、クラウドファンディングでは僕らが予想していた2倍以上のお金があつまった。たくさんの人が支援してくれた。

そうして僕はやりたかったことを叶えることができた。

支援者ひとりひとりの顔と名前を忘れることはない。

「がんばってね」と支援してくれたお金は、その人が明日ごはんを食べるのにつかうはずだった。大好きな趣味につかうはずだった。いつもがんばっている自分へのご褒美につかうはずだった。そんなお金だ。

お金がない学生も「クレジットカード決済できたので」と支援してくれた。現金が手元にないのにだ。自分の生活もギリギリなのに。

大切なお金だ。そのお金を稼ぐために費やした時間があったはずで、そのためになにかを我慢していたのかもしれない。


そこには体温があった。愛があった。

たくさんのお金とともに、たくさんの人の想いが指定口座に振り込まれた。

ぼくは、お金が好きになった。

 

想いを乗せていけ

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僕はたくさんの人たちの気持ちを受けとって、お金にも体温があることを知った。

いや、お金自体に体温はないけれど、お金に体温を乗せることはできる。

それから僕は想いを乗せてお金をつかうことにした。

たとえば友人のカフェにいって、楽しい時間を過ごし、笑って、明日もまたがんばろうって思えて、その時間に対して「ありがとうね」とお金をつかうようになった。

好きなお店でお金をつかい、好きな人にお金を落とすようになった。散髪は友人の美容師に。歯のメンテナンスは友人の歯科衛生士に。

友達割引なんかもしなくていい。なるべく多くのお金を落としたいからだ。活動資金にしてほしいからだ。応援したいし、生き残ってほしいからだ。

そうして誰かを想う気持ちをお金に乗せてつかうようにしてから、お金って案外悪くないかもなって思えるようになった。

誰かを応援できる1つのツールだと思ったら、温かさを感じるようになったんだ。気持ちよくつかえるようになった。そして、ちゃんと受けとれるようにもなった。

 

循環させたい 

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ぼくはたくさんのお金を受けとってみて、たくさんの想いを受けとってみて、初めてお金を好きになった。みんなのおかげなんだよ。ありがとうね。

だから僕もこうして、誰かに体温を渡していきたいなって思う。あたたかいお金を循環させて、それを受けとった人がまた誰かにやさしくできたならいいなって。

社会はやっぱり冷酷で、お金はどうしても無機質になってしまいがちだけどさ、僕はいまでも体温のあるものが好きで、子どものころから抜け出せなくって、愛あるお金に興味があるのだ。

この気持ち、リレーできたらいいな。